読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

東尾張乱射事件

【次回の記事予定】「お金」で「愛情」や「友情」が買える『脳内麻薬 ドーパミンの正体』を読んだ感想。

NUDE or Higashi

Owari Ranshajiken

ざわざわざわざわ

岩波文庫と佐野洋子

『ビリー・バット』メルヴィル(著)坂下昇(訳)

 わりかし薄い本なので、遅くとも一週間あれば読了できると手にしたものの、小説の舞台である「海」や「商船」や「軍艦」にまつわる固有名詞につまづき、いじり回したような訳者の表現に目を回し、やうやう読了だという陸へ上がる頃には、読書による船酔い状態という酩酊ぶりにおちいりそれはそれでおもしろかった。

 物語はコンパクトでシンプル。若くて純真かつ無垢な水夫ビリーバッドという男が、知的策略に秀でたクラッガートという老獪な曹長を撲殺してしまい、その罪を裁く軍法会議にてビリーバッドが死刑になるというお話。

 またおもな登場人物も僅か数人なのだけれど、実は物語と同時進行的に語られる作者の思索、というか思想というのか様々な書物からの引用や、実際に起きたらしき事件と物語の人物とを対比させ、その主眼はむしろ物語を語るというより、同時代に対して警告しあるいは抵抗しているようにさえ読めた。

 ちなみに現在は同作者の『白鯨』という小説の<上>を読み始めている。イントロに置かれる鯨にまつわる引用の多さに早速シビれているしだいなり。





『20世紀イギリス短編選 下』小野寺健(編訳)

 今年初めに読んだ<上>も素晴らしかったけれどこの<下>も読み終わるのが惜しいくらい読了後になにかが心に切なく残った。

<上>にはわりと知っている作家の名前があって、その名手の短編が読めるというだけで胸が躍ったのに、対して<下>のほうはまったく知らない作家ばかり。



ジーン・リース
ショーン・オフェイロン
ノーラ・ロフツ
オリヴィア・マニング
ウィリアム・サムソン
エリザベス・テイラー
ミュリエル・スパーク
ドリス・レッシング
ウィリアム・トレヴァー
マーガレット・ドラブル
スーザン・ヒル



 という11人のエントリー。

 で、この訳者自身も解説で「驚くべきことに!」と書かれているのには、この11人のうちの8人が女性の作家だということ。しかも小説で描かれるのはすべて負け犬の人生世界ということ。もちろん負け犬というのは「肉」を覆う皮膚やその表層面というほどの意味。実際に人がこの地に立っているということを支える「骨」となる自我や、意味や行為や時間を規定しようとするその「声という指先」は、本の中からその指先が何本も突き抜けてくるという按配だった。

 自分がもうちっと英語に堪能であれば、もしくはこの先に語学能力が向上するのであれば、すらすら原文で読んでみたいと現在夢想している。





『ふつうがえらい』佐野洋子(著)

 まえにNHKの「週刊ブックレビュー」という番組で、この作者の本の幾つかが、何度も何度もとりあげられていた。それならば読もう読もうとおもいながらエッセイはちょっとなあという抵抗がありつつ、今回、もし失敗したのならばなるたけ金銭的なショックは少ないほうがよいと打算し、新潮文庫のこの本をチョイスしたところ、どれだけ目が睡眠を欲していようともそうはさせないこの著者の語り口や、切れるほどのいさぎのいい生き方に取りつかれてしまった。これは機会あるごとにこの著者の本を読み進めていかねばならないと決めた次第である。

 何もしていませんが、絶対に、昔の国防婦人会の側に回らない、淡谷のり子になる、と固く決心しています。はさみを持って、他人のたもと切って、パーマの頭を切ったり化粧も弾圧した時、淡谷のり子はぎんぎらぎんのあの化粧と、どっ派手な洋服で、チャラチャラしてそれで押し通したといわれています。


 このくだりも淡谷のり子という人は、たしかに歌手アーチストだなと、ちゃんと聴いたことはないけれど今更ながらに感服もした。

広告を非表示にする
スポンサーリンク