三島由紀夫を読んでみるPart2 信じてみようという休憩 疑ってみるという仕事
- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1960/12/13
- メディア: 文庫
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『永すぎた春』三島由紀夫(著)
二行であらすじ
資産家の息子と古書店の娘とが織りなす婚約中の物語。肉欲vs精神 嫉妬の種類 男の種類、母の種類、成長する男子などがテーマになっていたように読めた。
〈感想〉
会話や改行が多くとても読みやすい。季節描写や人物描写に語句を費やすというより、テレビドラマやエンタメ調にみうけられる転結パターン、なにか突発的な事件をきっかけにすらすらと話が流れてゆく。恋人(あのひと)は私になんかすでに飽いているのではないか? といった青くみずみずしい不安や、その不安が透明に瓦解してゆく主観を巧に描いてあった。とくに百子(ももこ)という名前をもつヒロインの設定が、なにか良妻賢母的な女性像をほんのりと否定せんがキャラクターづくりで、なにげに応援したくなる。とまあ僕はその仕掛けどうりに読んだ。
- 作者: J・G・バラード,中村保男
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1969/01/10
- メディア: 文庫
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『結晶世界』J・G・バラード(著)
ざっくりとあらすじ
主人公の医師は他人の妻の尻を追っかけ、高温多湿の熱帯地区を目指す。途中、ホテルヨーロッパという山麓地で足止めにあう。物々しい軍の規制。他方、彼の探している女性と見まがうほどに似た女性を宿泊先のホテルに見る。彼は声を掛けてみる。彼女が自称ジャーナリストであることを知る。医師はその彼女と共にもっか規制されている「その先」へむけて、船を雇い、河中をあがってゆく。片腕が透明化、結晶化した死体に出会う。医師である彼はその死体を検視してみる。彼はその「死のかたち」が最初うまく理解できない。時間に浸食されていない「生のかたち」。
〈感想〉
なぜか知らないけれど人間をはじめ次々と水晶化してゆく描写を読むとわくわくしてしょうがない。また、物語中の人物の台詞にもあるとおり、自分も最後は水晶化して亡くなることができるのならそうしたいとまで思えてくる。なにか人間というかたちではついに実現しなかったであろう、世界との一体化が、やんわりとこの生を否定しながら、「新世界へようこそ」と啓示しているように読めた。 ちなみに主人公の医師が専門としている分野が、らいびょうとあるあたりも、あきらかにココではないアチラ側だと言われている側の人にくみした視線であるところも、俗にいうアカデミックで冒険好きなというキャラクターという枠から、あえて隔絶してみせたようでおもしろかった。