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東尾張乱射事件

【次回の記事予定】「お金」で「愛情」や「友情」が買える『脳内麻薬 ドーパミンの正体』を読んだ感想。

NUDE or Higashi

Owari Ranshajiken

ざわざわざわざわ

三島由紀夫を読んでみるPart4 “なにも望まないということは、取捨選択の権限を失うことだ”

音楽 (新潮文庫 (み-3-17))

音楽 (新潮文庫 (み-3-17))

『音楽』三島由紀夫(著)

ある精神分析医の一人称語り。

チックという顔面痙攣に悩む女性が診察室を訪れるところから始まる。
彼女は「音楽が聴こえないんです」と訴える。「音楽」というのはつまり「セックス時における快楽」のこと。

分析医は診察を重ね、彼女の過去話からひとまず推測する。それは男性嫌悪、まあトラウマでしょう、と。同時に分析医は、彼女の過去の男性関係を知るにつれ、それら男たちに対して嫉妬を感じもする。果たして彼女は分析医の前から姿を消す。療養地から手紙が届く。彼女は男性機能を果たさない青年と現在お付き合いしてますとのこと。エレクトしない男性とならばどれだけ官能的になろうとも、自分ひとりが自己嫌悪にならずに済むからです、という。

ところが数日後の手紙では「音楽が聴こえました」とくる。差出人をよく見ると彼女ではなく、不能者であるという青年から、分析医への相談であった。青年は彼女が燃え盛る石炭のように彼女がなってしまったことにひどく傷心しきっている。
 そうして畢竟、分析医こと三島由紀夫はこの「性的不能者」たちをなんとか救おうと筆を滑らしてゆく。

〈感想〉

 絢爛豪華な三島文体がすっかり色失せた小説だった。そのかわりに至極読みやすい。よほど読むのをやめようかと思ったがサクサクと読めるのでつい読みきってしまったという所。それくらい読みやすい。というわけで、この小説をそのままズバリ「B級エンターテイメント小説」としてのみ読めるのかというと、そうではなく、恐ろしいことにこの小説のラスト一行、カタカナのみでものされたわずかばかりの一行が、おそらく一種の「詩」だとも読める一行が、この小説のタイトルの上へ、雪のようにポツポツと降ってくるという仕掛けがあり、いまなお僕はそのカタカナ一行によって、突如見えてくる「白い」ものが、すぐ浮かぶ。




愛の渇き (新潮文庫)

愛の渇き (新潮文庫)

『愛の渇き』三島由起夫(著)

けっこうエロいあらすじでした

 浮気症の夫がチフスとなる。寝たきりの夫を看病する主人公の悦子。死臭を発する夫を看ながら、悦子はそれまであった嫉妬や憎しみが、利他的な愛のようなものに変質するのを悟る。夫の死後は云われるがままに田舎へと出向く。舅がいとなむ農家で養われることとなる。舅の家は、兄夫婦、女中など、8人の大家族。そこで寡黙で木訥な、しかしイケ面な三郎という青年に対しして悦子は惹かれてゆく。ヨロヨロの舅に犯されつつ、想いをよせる三郎が、同じ奉公娘を懐妊させるという、日常がやりきれないものになってゆく悦子。ところが三郎はその娘を愛してはいないという。ただの「はずみ」であった、と。悦子はその答えに喜悦するいっぽう舅にある進言をする。「三郎とその娘は絶対に結婚するべきだ」。その裏腹な意は、若いだけの女が、愛のない結婚をするとする。そうすると必ずや、その娘は苦しみ耐えるに違いない。だってあの子たちは愛のない結婚をするのだから。そうしてそんな若い娘の不幸な日常を眺められる「幸福」と、己が想いをよせる青年とは永遠に結ばれないという「自らの不幸」の両立こそ、吾が人生、最大の生きる希望なんだと悦子は決心する。
 果たして結末は、ここから先ちょっとしたミステリー小説の舞台としても適応できそうなある事件をおき、これ以上の物語を禁じていた。

〈感想〉

 小説の筋をよくよく思い返すにずいぶんとメロドラマふうだなということに思い至る。そうかといって簡潔な三角関係を脳裏に展開して読めるのかというと、そんな安っぽくもなかった。

三人称でありながら、主人公(悦子)の内面描写がつねに「悲劇」を求め、まるでそういった妖怪がじわじわ探るように物語が進行してゆくからだろうか。

そういった悲劇願望のような人生観、こないだに読んだ『ペルソナ』から想像するに、三島由起夫の祖母やら母、何かに耐える女性のイメージが異様に濃かった。縦割りに読むとすると、三島由起夫のファインダーからのぞくと、女性というものはつねに多情的でな生き物であるということなのかもしれない。もしくは、今回も一人の若い青年を鑑賞するという点において、その単純な美しさを表現するために、わざわざこういった設定をしつらえたというところだろうか。

ペルソナ―三島由紀夫伝 (文春文庫)

ペルソナ―三島由紀夫伝 (文春文庫)

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