カート・ヴォネガット・ジュニア
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,伊藤典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/12/31
- メディア: 文庫
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『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア(著)
作者が体験したらしき、「ドレスデンの無差別爆撃」が話の中心である、というより、その時の記憶が思考のぐるりを取り巻きながら、さらに物語の時間軸が唐突に、ビックリするくらいの速さで移行する物語。だけならまだしも、空間的には“トラフファマドール星”なる惑星にまで話は発展し、そして必ず戻ってくる。その語りが実にシニカルで脱力していて素晴らしかった。
ちなみに「ドレスデン爆撃」というのはウィキペディアによると
第二次世界大戦末期の1945年2月13日から14日にかけてイギリス軍とアメリカ軍がドイツ東部の都市ドレスデンに対して実施した無差別爆撃を指す。
この爆撃はドレスデンの街の85%を破壊し、3万人とも15万人とも言われる一般市民が死亡した。第二次世界大戦中に行なわれた都市に対する空襲の中でも最大規模のものであった。ドイツ語版のページタイトルは「ドレスデンに対する空からの攻撃・襲撃(独:Luftangriffe auf Dresden)」と訳される。日本でも「ドレスデン大空襲」として知られる。
〈感想〉
これまでヴォネガットの小説を二回ほど試した。一つ目は『タイタンの妖女』。これは爆笑問題の太田が推薦していたためである。自分的には今ひとつだった。『猫のゆりかご』は半分くらい読んで挫折した。それでも「ボコノン教」という名詞が、今なお記憶にこびりついている。で、今回やっと『スローターハウス5』に辿りつけることができた。
カート・ヴォネガットは、よく好きな作家のひとりにあげられている。村上春樹しかり、さきの太田光しかり、川上未映子等々…… そうなると当然、そういったクリエイティブ上位者らに、自分もぜひ共感したいものである。というわけで、自分も彼らを真似てカート・ヴォネガットを手にする。小説用の時間を費やし、ついには読了する。なのに「いっこう心が慄えなかった時」の寂しさといったらない!
また、おなじみの景色というやつだろうか?
ところがです。他の皆様がたと「何か」を共感したいのに何故かできないという「寂しさ」という心情が、この小説にかかると、ある秀逸な一句で時間というものを表現していた。なにかロックの歌詞のフレーズに近い感じで、どうすることでもできない悲劇の描写や事実に、このフレーズが多用されていた。
とてもバカげているかもしれないけれど、ぼくはこの一句を知って以後、、小説の語りべが読者に語るののごとく、ぼくは自分の胸中にツイートするようにしている。もちろんそんなツブヤキなど、現状にたちはだかる苦悩の山に対しては、何の効果も及ばず解決もしない。むしろ酷くなるような気がする。なので問題に直面したらば、まずは思考停止をする。それこそがなによりの自己防衛心理である、と最近は思わないでもない。たぶんバカボンのパパのフレーズに近いのかもしれない。つまりはなんだか分からないナンセンス独特の巨大な風呂敷感というべきか。