東尾張乱射事件

【次回の記事予定】「お金」で「愛情」や「友情」が買える『脳内麻薬 ドーパミンの正体』を読んだ感想。

NUDE or Higashi

Owari Ranshajiken

ざわざわざわざわ

『離陸』絲山秋子を読みました。

離陸

離陸




【作者初の長編】
 絲山さんのブログで『離陸』のことがちょくちょくふれられていたので、ファンとしてはこうしてその長編が読めるというだけですでに満足という気持ちが強くありました。
*ブログのところにちゃんと絲山さんのリンクをつけたので即飛べます。




*9月に僕がつぶやいたものです。読了後、このマーク・ロスコの画をみてなにか感ずることあるのか?と問われたら「ある」と答えることができます。けれど、この抽象画と『離陸』とを比べてどっちか深いのか?と問われたら······画だ!と言わざるえないです。




青ひげ

青ひげ

僕も未読です。せっかくなのでamazonのほしいものリストに入れました(入れるのはタダなので)






【ざっくりあらすじ】
 黒人が僕(主人公)を訪ねてきた。かれは僕の元カノを探しているという。彼女はフランスでその黒人の親友と結婚し、子を産み、そののち行方不明になったのだという。そんな折、僕はフランスへ転属となったのである。




主人公はパリのユネスコ本部に勤務ということで画像検索しました。かつその近辺ということで拾い画像を勝手に貼りました。



p109より

「凱旋門のあるエトワール広場のロータリーではすごいスピードで車が回っていた」

エトワールの意味が星だそうです。なんかイイね、と申しましょうか、コジャレたかんじが女子にウケるのでしょうね(ケッ!)。




東駅というそうです。主人公に依頼をする黒人の家がある地域らしいです。たぶん、こうやってリアルな画像をみて小説を読むとそうとうにイイような気がするというか――皮肉をこめていうと東駅という記述はあれどもおっとなるような描写はなかったのが残念です。





【感想】
 期待があまりにも大きかったせいかはっきりとこれは「失敗なんじゃないだろうか?」と思いました。正確にいうと全部で400Pあるので、その中盤を過ぎたあたりで、残念なきもちで粛々と読み進んでいった感じです。






【あの文体芸はどこに?】
 いろいろな文体が使いこなせる作者さんという前提がウソのような文体でした。無機質とかそういうんではなく――あえていえば美しくない村上春樹




【それからフランス語!】
 フランス語に堪能なひとならその言語のもつ"音"に感じいったりするのかもしれませんが、そうでない自分には明らかにフランス語表記はうっとおしかったです。しゃらくさいというか。
 例えば主人公の名前が、サトーサトー、元カノが乃緒(ノー)その息子がブツダンとか······




【地名の嵐】
 作者が毎回毎回、小説の舞台となる土地へ取材してよりリアルな作品を書くのは知っていましたが、その取材で得た情報が、地名や駅の名前、川の名前、ダムの名前とか、もう正直うんざりしました。




伊坂幸太郎のオビにある女スパイものとは?】
かつて、"編集者だったら誰にどんな依頼をしたいか"という質問に、「絲山秋子さんに女スパイものを書いてほしい」と即答しましたが、まさか本当に読める日が来るとは! 幸せです(伊坂幸太郎

 完全に釣りでした。いや、そんなことないだろう?と言う絲山ファンもいるかもしれないけれど、僕の読んだかぎりではいろいろとぬるかったです。





セリーヌについて】
 絲山さんのブログのおすすめで僕はセリーヌの『夜の果てへの旅』(上下)を約2年くらいかけて読みました。とても読みづらいながらも、醜悪なにんげんの描写に共感したりして、たしかにこれは異常な人間の書いたものだな、と記憶していただけに、今回そのセリーヌも素材として出るとあったので、期待したのですが······

夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)

夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)

夜の果てへの旅〈下〉 (中公文庫)

夜の果てへの旅〈下〉 (中公文庫)


1932年に「夜の果ての旅」でデビュー。反ユダヤ主義者という、とんでもない人間だなっと小説を読むまえまではおもったのですが、最低のくそクズ人間から見た当時の世界にたいする視点で想像するとしたら、「それのどこがいけないんだ?」と言えなくもないなっ、などと想像するのが精一杯でした。いずれにしても一作しか読んだことないので機会があったらチャレンジしたいと思います。




【ネタバレ有り/作者さんの試み】
 小説内しょうせつ。
 文体のつかいわけ。
 点字視覚障害のかたが使われる)による表記。
 フランスという設定。
 未来設定。




【そもそも長編なのか?】
 あきらかに長編というウリは盛りすぎだと思いました。




【他の人の感想をぐぐったら】
 おおむね高評価だったです。けれど池澤夏樹氏のものを読むと

たくさんの謎が謎のまま残るのに、読者は穏やかな納得と共にこの本を閉じる。一群の人々の上に働く時間の作用を書く、という作者の野心は達成されたと言っていい。

「今週の本棚:池澤夏樹・評 『離陸』=絲山秋子・著」、『毎日新聞』2014年11月02日(日)

 遠回しに「失敗してるっしょ」と言っていると読めなくもないです。美点がないためむりに設定に言及して、その設定の意味する背景をむりくり言葉にしたような感じで、期待して読んだのに裏切られた感が行間からにじみ出ているように読めてしょうがないです。
 


時を掴む 略して「トキツカ」、解離性障害持ちのつぶやき 
刊行イベントにも行かれたかたのレポート。



twitterをぐぐったら】


 10分くらいスクロールしたのですが本棚登録とかオススメだお、的なものしかヒットせず。ゆいいつ光っていたのが↑です。そう思うと、匿名というのは、やはり必要だなっと思いました。


【まとめ】
 次回作を待つほかないとおもいました。

 最後にちょっと名言

彼女のことを思い出すとき、人間の記憶は時系列じゃないんだな、と思う。最初に彼女のことをどう思って、どうやって付き合い始めたかではなく、どうしても別れのところから記憶がはじまってしまう。肌にくっついたガーゼが傷を破らないか気にしながらじわじわと剥がすように、言うなれば男らしさの微塵もない態度でしか自分の記憶にアプローチできないのだ。

結果、たのしかった思いでだけしか残らないとかいう定型句の達人、あるいは凡人がたまにいますが、その定型句をまっこう否定する名言だとおもいました、というか自分も過去の記憶にアプローチして読んだ結果、泣けそうです。

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