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東尾張乱射事件

【次回の記事予定】「お金」で「愛情」や「友情」が買える『脳内麻薬 ドーパミンの正体』を読んだ感想。

NUDE or Higashi

Owari Ranshajiken

ざわざわざわざわ

リチャード・パワーズ 

黒人がクラッシクの歌手として唄うとは?

じっさいにはこの国にも音楽はあった。(……)数々の音楽ジャンルがあった。聖歌の合唱、ゴスペルのうめき声、丸太小屋の労働歌、奴隷たちが暗号で交わす逃走計画、ニューオリンズ方式のけたたましい葬式――そういったものがすべて合成されて出来上がった新しい音楽が、単純で覚えやすいリズムに乗って綿花の木箱に収められたままミシシッピ川を北上してメンフィスやセントルイスへたどり着き、権力者には聴くことができないブルースへと変容し、再び北部で再合流すると、鉄道網に沿って一夜のうちにシカゴ中に広まる。(上巻より抜粋)


われらが歌う時 上

われらが歌う時 上

われらが歌う時 下

われらが歌う時 下






〈内容〉
1961年、兄(ジョナ)の歌声は時をさえ止めた―。亡命ユダヤ人物理学者のデイヴィッドと黒人音楽学生のディーリアは歴史的コンサートで出会い、恋に落ちた。生まれた三人の子供たち。
天界の声を持つ兄ジョナ、兄の軌跡を追うピアニストの「私」、そして、空恐ろしいまでに天賦の音楽の才能を持つ末妹ルース。(···)30年代を起点とした過去と50年代を起点とする二つの過去。なぜ二人は恋に落ちたのか。子供たちは何を選ぶのか。通奏低音のように流れる人種問題、時間の秘密。あの日に向けて、物語は加速してゆく。巨大な知性と筆力により絶賛を浴びてきたパワーズの新境地、抜群のリーダビリティと交響曲にも似た典雅さ。聖なる家族のサーガが、いま開幕する。全米批評家協会賞最終候補作。プシュカート賞/ドス・パソス賞/W・H・スミス賞ほか受賞。

↑二段目でいう「歴史的コンサート」というのが1939年復活祭だと思われ、小説ではマリアアンダーソンという黒人女性が7万人の聴衆をまえにした内面やその瞬間が描写されておりました。

ml.naxos.jp
http://1.bp.blogspot.com/-04EA4eudPDU/Uh6o9TeD39I/AAAAAAAAFVo/d3vjFwUmCL0/s1600/IhaveadreamMarines.jpg
マーチン・ルーサー・キング牧師、"I Have A Dream"演説50周年 | 私のリーバイス




で、検索したら動画もありました。バックに見えるリンカーン像の左下のところあたりにワープゾーンがあるとおもわれ(僕はそう解釈しました)、読み手はこのリンカーン記念堂ひろばに何度も足を運ぶこととなるという······ また、1963年。マーティンルーサーキングの「I have dream」(25万人の集会)もおなじリンカーン記念堂のようで、というかやはり小説にもでてきました。

北アフリカの戦場から連行されたドイツ人捕虜は白人専用の待合室に座ることができるが、彼女には許されない。(···)彼女の公演は連日満員御礼だが、彼女自身は市内のホテルに泊まることができない。彼女は(···)『若き日のリンカーン』の初日舞台あいさつに参加するが、市内のリンカーンホテルからは宿泊拒否される。彼女の第一声が世界に向かって放射されるまでに永遠が経つ。(···)四半世紀後、彼女は再び同じ位置に立ち、この聴衆よりも三倍大きい聴衆に向かって歌を歌うことになる。その時もまた、豪も変わることのない絶望的希望の洪水が彼女を飲み込むことになる。





とりわけ下巻でクローズアップされる末妹のルースが「ブラックパンサー党」に所属し活躍しているので検索したら、現在は、「新ブラックパンサー党ラリー・ピンクニーの見たオバマ大統領①」というものがあったので貼ってみました。というか、「オバマデセプション」という映画があることも知らなかったので、検索したら日本語字幕動画がでてきたので少し見てみるとイントロがリンカーン記念堂で、180万人とありました。

http://viscrit.cca.edu/wp-content/uploads/2010/09/black_panthers.jpg
Black Panther Tour




昨夜、TUTAYAで『新仁義無き戦い』と、1961年。映画『用心棒』をおさえて一位になったという『不良少年』を見たのですが、すくなくともその二作よりは、おもしろそうなので見てみようと思います。



文章を音階のように操る表現を体験した。

【感想】
とにかく読み進める瞬間瞬間が楽しくってしょうがない日々が数日続きました。
文字を目で追い、読んだだけなのに!この冴えない人生がちょっとだけ充足しました。明日も明後日もつづくであろう苦悶の労働地獄を、すこうしだけ忘れさせてくれました。「時間よ止まれ!」と念じてみました。ほんとに!

あんまりにも素晴らしかったので、その後、パワーズの未読の作品群
『エコーメーカー』
『囚人のジレンマ』
『幸福の遺伝子 』
をたて続けに読了することとなりました。







舞踏会へ向かう三人の農夫

舞踏会へ向かう三人の農夫

(もう何年もまえのことですが『舞踏会へ向かう三人の農夫』を読んで衝撃を受けたうちの一人です。無人島に持っていくならのリストの一冊です。つづいて、もっともっとパワーズをよく知るための副読本として『パワーズブック/インタビューやパワーズ論』も読んだのですが、これはひどいものでした。)


そうして現在、その衝撃の余波により、このブログを約一年ぶりぐらいの放置から、更新するに至りました。





■ではさて、どんな点にぼくはシビれたのだろうか?

(ネタバレ含む↓)
まずは、前半(P174)でとつじょ展開される、あまりにリアル描写される殺人シーン。無抵抗な黒人(14)の少年を、白人のDQNな大人たちがなぶり殺しにする痛ましい箇所でした。
その残虐指数はケッチャムの『隣の家の少女』の比ではないものでした。しかも、この惨殺は実際に起きた事件とありました。あげく、犯人である白人の二人はお咎めなし。
そしてその殺人事件を、小説内においてジャストなリアルタイムで、けれども遠いどこかのニュースとして知るのが、この小節の主人公たち、クラシックの歌手志望である黒んぼの兄弟なのでした。
(マーティンルーサーキングの例の有名な演説「I Have a Dream」はこの犠牲になった少年の8回忌の日になされたとウィキにありました。)
またエメット・ティル(←少年の名前)で検索すると、その無惨すぎる画像も発見され、すこし胸がつまります、というか、小説内では「まるでゴム人形みたいだね」と少年たちの口を借りて表現されているのですが、まさしく、そのとうりだったのでした。


エメット・ルイス・ティル (愛称ボボ)(Emmett Louis “Bobo” Till 1941年7月25日– 1955年8月28日)は、アフリカ系アメリカ人の少年。14歳の時、イリノイ州シカゴの実家からミシシッピ州デルタ地区(英語版)の親類を尋ねていた折、食品雑貨店店主、ロイ・ブライアントの妻キャロライン・ブライアント(21才)に口笛を吹いたと、ロイと兄弟J. W. ミランから因縁をつけられ、後日ティルの大叔父の家からティルを無理やり連れ出し、納屋に連れ込んでリンチを加え、目玉を一個えぐりだした。その後銃で頭を打ち抜き、有刺鉄線で70ポンド (32 kg)の回転式綿搾り機(英語版)を首に縛りつけて重りにし、死体をタラハシー川(英語版)に捨てた。ティルの死体は3日後に川から発見され、引き上げられた。ウィキより


そんな1955年を皮切りに、というか、同時に彼らの両親――ユダヤ人の父、黒人の母――かれらの出会いや時代背景が、時間軸を過去にぐんぐん遡ったり、またすぐに戻ったり、80年代まで来たりして、描かれておりました。

また、この小説の消えることのないROOT音のごときテーマ、描写の基準となっているのが、徹頭徹尾ミュージックであるため、音楽に関するさまざまな単語、用語が、それこそ音として聴こてきそうなほどのマニアックすぎる情報が、つぎつぎと連射されてきました。

例えその単語の意味や背景、あるいはセンテンスのしめす意味がさっぱりなのだとしても、不思議と気持ちよく読み進めてしまうのでした。


けれども逆に、この小説における傑出した視点/主観が、彼らが黒人である場合、つねにこの世界から肌の色が違うというだけで差別される存在としてあるため、読み手のこちらまでがその被差別意識に同化してしまい、もしかしたら白人がこの近辺にいるかもしれない?殺されるor逮捕されるかも? 危険だ!といった強迫観念に苛まれ読むこととなり、つまりは、白人至上主義どまんなかともいえるクラシック界を生きる彼らとともに人生を歩むため、読了後は、かなりの確信をもって「俺たちにはそもそも選択肢などない。リンカーンはただの一人も奴隷解放などしていないんだよ!といったような、それまで思いもしなかった、黒人とおなじらしき諦念ががっつりと自分にも根付くようになりました。

他にも黒人差別にまつわる様々なエピソードが所々にでてくるため、ようするにとっても勉強になりました。
けれど基本は音楽小説。黙読してもさっぱり知らない作曲家や曲や音楽用語などがつねにちりばめてあり、即効演奏したさい、その演者の脳内や身体に訪れているであろう、なにごとかが圧倒的な筆致でものされておりました。



【最強のナゾ】
こんなに素晴らしい小説だというのにナゼか? 現在!!廃本となっているようです、というわけで、下巻がなかなか入手できませんでした(愛知県ないの主要本屋さんを四軒まわりました。Amazonはおろか楽天ブックやヤフオクにもみあたらず、結局ぼくは図書館でレンタルすることとなりました。ちなみに上巻のほうも定価以上の額をはたき出しました。
(ところが、いまさっき密林をのぞくと約半額で出まわっている、という······)


エコー・メイカー

エコー・メイカー

エコー・メイカー

【感想】
ガサツな白人青年とその姉が主人公のためか、読み通すのがしんどかったです。





囚人のジレンマ

囚人のジレンマ

囚人のジレンマ

【感想】
行間のつまったジョン・アーヴィングの小説みたいだった、と申しましょうか、けっしてつまらなくはないけれど、圧倒されるような面白さはなかったです。高橋源一郎がアメリカ文学はほぼすべて家族の物語です、となにかで書いてましたが、この小説も徹頭徹尾アメリカに住む家族を描いたものでした。




幸福の遺伝子

幸福の遺伝子

幸福の遺伝子

【感想】
さえない中年教師と若いアルジェリア女子(幸福の遺伝子をもつ/とにかくポジティブ)。そんな年の差カップルの設定による期待で半分くらいまでは黙々と読みましたが、途中から「すぅっー」と小説にあったはずの魅力や期待が消えていきました。それでもちゃんと読了しました(ラストがホテルの一室なのでした)。
他のはてなブログを検索すると。山形浩生の「経済のトリセツ」で秀逸な書評がものされていたので貼ります。また、エマヌエルプイグ『天使の恥部』が傑作として奨められていたので「ほしいものリスト
」に入れてみました。さらに付記では円城塔の『幸福の遺伝子』を評価する書評へのリンクと、その評価にたいする山形氏の見解がすこしものされていて、たいへん興味深く読みました。





ガラテイア2.2

ガラテイア2.2

『ガラテイア2.2』は未読です。




【まとめ】
現在は、『オルフェオ』というパワーズの新作(音楽小説らしい)がすでにあるようです。


オルフェオ

オルフェオ

内容紹介にある「微生物の営みを音楽にしようと試みる現代芸術家」というのを見ると、ぜったいに面白うそうだ!とおもいつつ、amazonの二つあるレビューのひとつ(結論から書くと、ストーリーテリングの力がとても落ちている。あまり嫌味な事は書きたくないのだが)との結論をみると、「どうせ読むならウェルベックの新作『服従』のほうがいいな」といまおもってます。

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